びっくりするほどタンザーワ! 丹沢山(1567m)ピストン!!

 

 
 始発バスに乗るため朝4:30に起床。登山の日の朝のいつものメニュー、フルーツグラノーラとバナナを食べたらザックにハイドレーションパックをセットし、ボトルホルダーにストックを挿して家を出る。 携帯電話はすっからかんと忘れていたが、気付いたのはいい加減坂を登ってしまい引き返したら電車の時間がやばくなるあたり。 ええ、もうだめだ、諦めよう。
 
 大山から始まってもう6回目の丹沢だというのに何でこんなに浮き足立っているかといえば、いよいよ大倉〜丹沢山ピストンに挑戦するからだ。 表尾根縦走と塔ノ岳ピストンは既に一回こなし、特に後者はまだかなり日が高いうちに帰還できたので緊張することもないのだが、今回はそれプラス往復で2時間(ヤマケイのコースマップでは3時間弱)の距離をこなさなければならない。 この2時間追加がどんだけの足の負担になるか想像できないのだ。
 
 「塔ノ岳まで登って、足が駄目そうだったらそのまま下りてきちゃえばいいよな」と考えていても、バス停で会話したほかの登山者には「いや〜、今日始めて丹沢ピストン挑戦するんですよ〜」などと口にしてしまう。弱気の虫が出たり隠れたりする中、大倉のビジターセンターに降り立った。 今回は特に距離が長くなるので念入りにストレッチするが、そのせいか同じバスで降りた人はみんな先に行ってしまい、残ったのは地下足袋に帆布の脚絆と加藤文太郎スタイルで渋く決めた青年だけだった。 大倉のビジターセンターを出たのは朝7時12分。
 
 今日は距離が長いので前回に比べて気持ちハイペース、あまりのんびり途中休憩もせず15分おきにハイドレーションでスポーツドリンクを飲み、気が向いたらポケットに入れておいた行動食の甘納豆をつまむ・・・という、できるかぎり行動時間を増やして距離を稼ぐスタイルなのだが、肝心のスピードが一向に上がらない。 バスで軽く挨拶した兄ちゃんにはあっという間に引き離され、地下足袋に脚絆の文太郎青年にも抜かれたと思うと見る間に引き離されていった。 暑さのせいもあるが、やはり新島の宮塚山に登って以降、まったく歩きのトレーニングをしていないのが響いているようだ。 
 
 後もうひとつ、今日は荷物を軽量化した上にトレイルランニングシューズを使用し兎に角スピードアップ!のつもりだったのだが、ご存知の通り新島でソールを駄目にしてしまったので、冬に備えて購入したグランドキングのごっつい縦走用登山靴(GK68-02)を急遽使用しているのも響いているようだ。 この靴が悪いというのではない。ただ、本来重い荷物を背負っても足首を痛めないために関節をガッチガチに締め上げる靴であるゆえ、脹脛のあたりの圧迫感が半端ではないのだ。 おまけに前日に駅まで往復6km程度歩いただけなので慣らし終っておらず、足に馴染んでいない。 急なガレ場や不規則な樹の根っこ地帯では足が安定していい感じなのだが・・・。
 
 それでもペースの遅い高齢の登山者は何とか追い抜き引き離しつつ登っていく。 花立山荘(1300m)を過ぎたあたりでは霧が濃厚に立ち込め気温もじわじわと下がりだいぶ楽になってきた。ちなみに堀山の家(950m)では気温26.3℃前後だったが、このへんではどうだろうか。
 
 霧と雲が出てきて太陽が隠れてくれるのはこの厳しい残暑の中有難いのだが、夏場に丹沢に5回登って一度も山頂が晴れずに眺望が利かないというのはどうしたことか。 10回登って晴れたのは1回だけという人もいるからそう珍しくもないのだろうが・・・。

 
 前回は花立山荘を過ぎたあたりで調子が上がってきたのだが、今回は特に調子が上向いて来るという事もなく、何とか登りをこなすといった具合。 途中これまでとは違うでっかい角の雄鹿にびびったりしつつ、9時52分に何とか塔ノ岳山頂に到着。 タイムは前回より10分ほど縮まって2時間40分。 殆ど休憩も取らなかったので本当はもうちょっと縮めたいところなのだが・・・。 
 


 
 とりあえずベンチに寝っころがりストレッチをしたのだが、起き上がってベンチを見ると見事に人型の染みになっており仰天。あまり周囲に人が居ないので脱いで絞ったらジップアップシャツ、メッシュアンダー共にビシャビシャと水滴がたれてきた。 前回に比べて風がないせいで汗も余計にかいてしまうようだ。
 
ストレッチしてたらかなり太腿が張っており、何だか余計に攣りそうなのでほどほどにして切り上げる。5月の表尾根縦走で食べ残したソイジョイを半分だけかじり(ここまで甘納豆を少ししかつまんでないのにそれほど食欲が出ない)、10時05分に山頂を発ち丹沢山へ向かう。 いよいよここから未知の世界だ(大袈裟)。
 
 丹沢山へ向かう道はこれまでと違って一気に静かで穏やかな雰囲気になる。 塔ノ岳までに比べて登山者が少ないのに加え、傾斜も緩やかでバカ尾根のように殺伐としたところがないのだ。
 
 日高、竜が馬場といった小ピークをこなしていくと、向こうからバス停で軽く話した初ピストン挑戦の青年がやってきた。 恐らく塔ノ岳山頂までで10〜15分、丹沢山山頂までにもさらに10分近く差をつけられているのだろう。競争ではないのだがちょっと悔しい。 ちなみにこの辺も晴れていれば素晴らしい眺望らしいのだが、ご覧のとおりの濃霧で自分の行く先すらあまり見えない状態だった。

 
生物モニター調査のための捕虫網が沢山仕掛けられたフシギ空間を抜け、花畑を過ぎるといよいよ丹沢山の山頂だ。 時間は11時4分。 ほぼ一時間。ガイドブックのタイムだと1時間半、健脚さんだと50分前後との事なのだが・・・。まあまあなのかな?


 
  みやま山荘でスタンプを捺してから山頂の標識で写真を撮っていないことを思い出した。ところが辺りを見回してもそれらしいモノが見当たらない。 確か「日本百名山 丹沢山」の標識があるはずなのだが・・・。 と、間抜けな感じで二本立ってる丸太の根元に「メンテナンスのため撤去してあります」とラミネートされた紙が張ってあった。 う〜ん、眺望がきかない分せめて有名なこの標識の前で撮りたかったのだが・・・。
 
 仕方ないので下の石に彫り込まれている標識を写真に収め、休憩をとる。 今日はとにかく足に負担がかかるので、大休止のときは一旦靴を脱ぎ、念入りにストレッチとマッサージをする。 ついでに食べ残しのソイジョイとコンビニで買ったあんパンを食べ始めたのだが、疲労のためか食欲が出ずあんパンは半分だけ食べてザックに戻した。 ちょいちょい甘納豆をつまみ、スポドリをカパカパ飲んでいるとはいえ、4時間近く歩きっぱなしなのにあんパン半個とソイジョイで腹いっぱいというのはどうしたことか。
 
 そんなことを気にしていたら、怪しかった空からついにポツリポツリと雨が降ってきた。 一番遠い折り返し点まで来て雨というのはさすがに気が滅入る。 ところが仕方なくレインコートを取り出そうとしたら雨はすぐ止み、今度は雲が切れたかと思うと太陽が顔をのぞかせ、オラオラオラとばかりに炙りに出てきた。 おかげで急に暑くなり、、寝苦しくなったか昼寝中の登山者もむっくり起き上がってきた。
 
 ところでこの時山頂には3〜4人居たのだが、あまりに眺望のきかないがっかりコンディションとひんやりした霧、塔ノ岳に比べて開放感のない雰囲気、ここまで来た疲労等などがミックスされたせいか皆一様に押し黙っていたのだが、この人だけは饒舌だった。なんでも蛭ヶ岳まで行くつもりだったのだが、「眠いからやめた!」とのこと。 さすがに蛭ピストンは自分の限界を超えてると思うのだが「ここまで来れたんだから大丈夫ですよお」とニヤニヤ笑いながら蛭ヶ岳行きを薦めてくるのである。 いや、さすがに尊仏山荘かみやま山荘に泊まってから行くのが普通だと思うんだけど・・・。
 
 まあそのうちに泊りがけで行くんだろうけど、まずはここから帰らねばならぬ。 来た道を引き返し塔ノ岳へ向かう。 と、一瞬霧が晴れ、その蛭ヶ岳が顔を覗かせた。 ここまでがんばったご褒美だろうか。

 
全体的には丹沢から塔までは下り基調のはずなのだが楽な感じはせず、いい加減疲れてきたのか塔ノ岳までの時間は殆ど変わらないどころか1分だけ遅くちょうど1時間かかってしまった。
 


 
 塔ノ岳で再び大休止を取り念入りにマッサージしてから午後1時に下山開始。 わずかに雲が切れたりもしたが、結局富士山方面は見えなかった。 だから山頂ではこんな会話が交わされるのである
 
「しっかし塔っていっつもこんな天気ですね。まあ前よりはマシですけど」
「いや、夏でも晴れることあるよ」
「何時でしたか」
「ん〜と、3年前だったかな?」
「駄目じゃないっすかw」
 


 
 天神尾根の途中で立派な角の鹿が道の真ん中でもっしゃもっしゃと草を食んでいた。 登りでも遭った奴だが、登山道の真ん中を占拠するとは神経の太い奴である。目つきも微妙に悪かった。 なんでも「トウタロウ(塔太郎?)」とかいうあだ名があるとかないとか、山頂付近の鹿のボスだとかなんとか、いろいろ噂の多い奴である。山頂のベンチを占拠していたこともあるらしい。

  
 堀山の家のあたりでスポーツドリンクが尽きて、真水のハイドレーションバッグに切り替える。 そろそろ疲労の蓄積が誤魔化しの利かないところまできたのだろう、駒止茶屋と見晴らし茶屋の中間あたりから急激にスピードが落ちたのが自分でもはっきりわかるようになってきた。 それでもまだこの時点では傾斜が緩くなったところでは少しスピードを上げるくらいの事はできたのだが、観音茶屋のあたりまで来ると膝が悲鳴を上げてそれすら出来なくなってしまった。急な段差の階段だけでなく緩やかな下り斜面でも膝に衝撃が来るようになってしまい、痛みをかばって歩いていたら、急いで下っているわけでもない山ガールにまで追い抜かれてしまったのだ。 観音茶屋なんて殆どゴール(スタート)地点みたいなものなのだが、そこから登山道入り口までが信じられないほど長く感じてしまう。 今までの山行だと、「早くひとっ風呂浴びてえ」「帰ったら冷たいビール飲みたいな」「晩飯はたんぱく質たっぷりのゴーヤチャンプルだな」などと考えるのだが、ようやく大倉のビジターセンターまで来た時にはそういった欲望が入る余地もなく、
「もう、下りはイヤ!」
ということしか考えられなくなっていた。
 
 ビジターセンター着は3時40分 2時間40分だからタイム的には前回と同じだが、今回登りと同じ時間というのはいただけない。 駒止茶屋以降の大ブレーキがなければもっとタイムが縮められたはずで、こりゃもっと鍛えなおさないとなあ。

 帰りの電車ではいつも通り転寝したのだが、途中あまりの不快臭に目を覚ましてしまった。その臭いの原因は自分の汗がたっぷり染みたシャツだったわけだが、隣に座った人は災難だったと思う。申し訳ない。
 
 
タイムライン
7:12 大倉バス停発
7:36 観音茶屋
7:54 見晴茶屋
8:25 駒止茶屋
8:43 堀山の家
9:22 花立山
9:52 塔ノ岳山頂 10:05発
10:28 日高
10:44 竜が馬場
11:04 丹沢山山頂 11:35発
12:37 塔ノ岳山頂 13:00発
13:30 花立山
14:05 堀山の家
14:25 駒止茶屋
14:55 見晴茶屋
15:15 観音茶屋
15:40 大倉バス停
 
服装 
サウスフィールド・ジップアップ半袖Tシャツ

パールイズミ・クールアンダーノースリーブメッシュ

サウスフィールド・ハーフパンツ

キャラバン・GK68-02

イグニオ・スゴ涼感ワークキャップ
 
装備 
ザック:ドイター・クロスエアーEXP

ストック:サウスフィールドTP1002

水筒:エバニュー・ハイドレーションパック2㍑×2(水2㍑、倍に薄めたスポーツドリンク2㍑)

レインウェア:モンベル・レインダンサー

地図:二万五千分の一「大山」、昭文社「丹沢」、ヤマケイガイド「丹沢」

コンパス:SUUNTO

食料:あんパン×1、エナジーゼリー×1、ミニようかん×2、カロリーバランス1箱
   塩タブレット×3、甘納豆、黒ゴマきな粉げんこつ飴、ソイジョイ×1

カメラ:オリンパスμTough

GPS:GT-730FL-Sデータロガー