島旅2012 式根島〜新島(2)

 

式根島が見えてきた
 
 毎回の恒例行事で大島、利島、新島で叩き起こされ、なんとなく寝不足状態で式根島到着。3人組は当然のように寝不足腫れぼったい不機嫌面であった。彼らはバンガロー泊だが自分はキャンプ場なのでいったんここで散開。
 
 式根には二日しかいないので少ない時間をフルに活用しようと「荷解きしたら早速落ち合って潜ろうぜえ!」と元気一杯の提案をしたのであるが、寝不足でフラフラの3人に「疲れてるからまずは寝る!」と却下されてしまった。仕方ないので午前中は勝手に動こうと13kgほどの荷物を満載したフレームザック(今回はハシゴなので自転車を持たず、大型バックパックのみなのである)を背負ったままスタスタと歩き、
 

泊浦

泊浦で写真を撮った後に大浦のキャンプ場でテントをさっさと張って、速攻で海に飛び込む。
 

大浦


・・・・!!!??冷っめてーっ!!!!
 
 一応事前に頭からジャブジャブと水を被っていたから感じ取ってはいたのだが、一昨年の八丈島感覚のつもりでいたら予想外に冷たかったので面食らってしまった。あとでライフセーバーに聞いたのだが、なぜかここ大浦海岸だけ昨日の晩に冷たい外洋の水が流れ込み、23度まで低下したらしい。
 
 それでもさすがスノーケリング天国の海。 3年前に訪れたときより遥かに豊富な魚がお出迎えしてくれた。


もう多すぎて何がなんだか


るりちゃんだかそらちゃんだか
  
 体が冷えてきたので一時間半ほどで切り上げて小休止。 ここで電話をしてみたのだが、なんでも借りたバンガローが荷物を預けられてもチェックインできるのが午後からとかで全く眠れていないというのだ。 それに予定を立てるのでなくその時のノリと流れで行動したいとのことだったので、それじゃあ中の浦に連れ出すのも悪いかなぁとこっちは勝手にメシを済ませて先に潜ってしまう事に決め、腹も減ったので式根島のお楽しみ、岩ノリ弁当を購入するために池村商店へ向かった。 強烈な陽光と夏の正統派入道雲の下を歩いていると、冷えた体もあっという間に火照ってくる。
 

夏の正統派入道雲
 
 ところで3年前に池村商店を訪れた時は暑さでぐったりとしたマスコット犬がいたはずだったのだが、見当たらないので店の人に尋ねてみると残念ながら亡くなってしまったらしい。さすがに3年もたつと犬も亡くなったり入れ替わったりするのだなぁとシミジミ。
 店先のベンチを借りてとりあえず岩のり弁当をつまみにビール・・・といきたいところだが、このあとも潜るので自重してコーラで。


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 キャンプ場に戻りカメラ、餌付け用のギョニソ等の準備を整え、ハイキングコースを突っ切るためにトレランシューズに履き替えて中の浦へ向かう。 森の中を歩いているうちにどんよりどよどよと雲が立ち込めてきたが、雨が降ったところでどうせ海に入って濡れるので気にせずに進む。 海岸のベンチでマリンシューズ代わりの地下タビに履き替えているうちにポツポツと降り出してきたが、構わず海に立ち込んだ。 周りはキャーキャー言いながら海から上がってパラソルに逃げ込んだりしているのが滑稽だった。 中の浦は大浦より体感にして2〜3度水温が高く(朝の時点で3度ほど高かったらしい)、入ってもヒヤッと感じることがないので雨に打たれるよっかなんぼかマシなのであった。
  
 潜って下から水面を見るとパシャパシャと水滴が叩きつけられるのも判りなかなか不思議な感じ。 カツオが一本釣りでシャワーの音に突っ込んでいく時もこんな感じなのだろうか。しょっちゅうダイビングしてる人にとっては珍しくも無いのだろうが、好天の時しか海に入らない自分にとっては水中で聴く雨音というのもなかなかレアなものだ。
 
 さて、光が射さない分鮮やかさに欠けるとはいえさすがNo.1スポット。魚は大浦よりさらに種類・数とも豊富でカメラを向けるにも目移りしてしまう。
 
 自分が勝手に「中の浦のヌシ」と呼んでいるハマフエフキ

 そのうちギョニソでシマダイ(イシダイの稚魚)を寄せてる女性がいたので、自分もギョニソを持ってきたのを思い出し一旦陸に上がる。
 
女性の差し出すギョニソに群がるシマダイ
 
自分の手からがっつくシマダイ。 軍手越しだが指噛まれた。
 
 雨も上がり晴れてきたし、あんまり魚も豊富でコーフンしたのでついでに電話で三人組に連絡を取って呼び寄せようとしたのだが、電波が悪かったので諦めて海に戻った。
 
 さて、雨が止んだと思ったら瞬く間に雲がかき消されてしまい、そのうち光が射してくるとスノーケリングの楽しさも一気に五割増し。 ソラスズメチョウチョウウオイバラカンザシといったカラフル系の色鮮やかさはもちろんの事、地味目な魚やチビな魚もクッキリハッキリして、行動もアグレッシブに感じられる。 ブダイが頭を上にしてその場を動かず、どことなくウットリとした顔でプカプカと中層を漂ってるので何をしてるのかと近寄ってみるとホンソメワケベラにクリーニングしてもらってる真っ最中だったり、先ほどのシマダイの群れがウツボと大喧嘩して追い散らしていたりとなんとなく海の中の歌舞伎町テイストを感じちゃったりもするのでありました。

 

うつぼちゃん
 
 イシダイに追い散らされたウツボが別の岩穴から顔を出した時にバッチリ撮れた(ウツボはあの顔に似合わず意外とシャイですぐに顔を隠してしまうのでなかなか顔を撮れない)ところでスノーケリングを切り上げ、冷えた体を温めようと温泉に向かうことにした。ふと時計を見ると3時半。 二時間以上潜っていたのだ。
 
 公衆トイレの洗面台から伸びてるホースで軽く水を浴び砂を落としてからリュックを置いてあるところに戻ると、宿で寝ていると思っていた3人が海から上がってきたところであった。 何でも食堂で昼メシを食った後雨が上がったら速攻でこっちに来ていたらしい。
 コーフン気味に「凄いだろ?魚一杯だろ?綺麗だろ?」と尋ねてみたのだが、びみょーに反応が鈍く、戻ってきた返答は
「う〜ん・・・・なんか求めていたものとちょっと違うな・・・」というモノであった。
そうだった。野蛮人の自分と違いシティボーイの彼らはどちらかといえば魚一杯の岩礁帯より真っ白い砂のビーチを求めていたんだっけ。
「ん〜・・・じゃあおまいらは明日は泊浦行ったほうがいいかも知らんな・・・魚はあんましいないと思うが・・・」
と、なんとなく気の入らないアドバイスをしてから今後の予定を尋ねると、寝不足のままスノーケリングをした事でさすがに疲労困憊したようで、温泉には行かず夜飲む酒の買出しをしてから宿に戻って寝るという。 
 
 湯に入って血行良くしたほうが良く眠れると思うんだけどな、と思わなくも無かったが、地鉈温泉までは結構歩かなきゃいけないし、無理もさせられないので一人で温泉に向かった。
 
 今回で3度目になる地鉈温泉だが、潮の具合のせいか丁度良い湯加減の広い湯壷がなく、温かい湯が流れ込んで背中はホカホカだけどお腹側は外から冷たい海水がちょくちょく流れ込んでぬるま湯〜冷水という狭い岩の割れ目に体を突っ込んでいく、というアクロバティック入浴を余儀なくされた。 それもしばらくしてさらに潮が満ちると熱過ぎで入れなかった湯壷もいい湯加減になってくるのでちょこちょこと移動。 不便なようでこれが地鉈温泉の醍醐味なのだ。それに、さっきまで入っていた波で洗われ水温がコロコロ変わる湯壷にしても温水シャワーとと冷水シャワーを交互に浴びて血管の拡張&収縮を促進&渦巻く海水で揉まれるマッサージ効果的なものもあってこれも体に良いんじゃないの?などと思わなくも無い。
 

地鉈温泉
 
 この後足付温泉に行ってもよかったのだが、移動してきた人にヌルくて良くない按配というのを聞いてしまったので今日は諦めて温泉を撤収、朝食用のクラッカーと野菜ジュースなどを購入するためにスーパーおくやまへ足を伸ばした。 このスーパーの店主のおっさんは温泉仙人の異名を取りガイドブックや観光協会のパンフにも載ってない式根島のオモシロスポットを知り尽くした人で、前2回に行きそびれた秘密の場所を聞きたかったのだが、残念な事に不在であった。
  
 キャンプ場に戻ると大浦はちょうど美しい夕日が沈むところだった。 晩飯用の米を研いで水に浸したらまだちょっと間がありそうだったのでカメラを手にすぐ近くの夕陽の丘に駆け上る。 夕陽の丘と言っても藪の中一人が通れるだけの幅しかない心細い道というか踏み跡を登っていき、頂上のところに視界が開けてるスペースがやっと一人分だけあいている、というところだが、たしかに夕陽が真正面に見えていい感じだった。
 

 
 陽が落ちると何をするにもやり辛くなるので水シャワーを浴び、ご飯を炊いてレトルトカレーをかけて手早く夕飯を済ませる。毎回もうちょっと食事を何とかしたいところだが、荷物の軽量化を徹底&なま物が痛みやすい夏場の単独行ではなかなか改善が難しいのだ。 キャンプ場ではどこかの大学のダイビング部の合宿だろうか、豊富な野菜、スピアで獲ったと思しき新鮮なお魚を調理していて、団体キャンプのアドバンテージをフルに生かしているので羨ましくなってしまった。
   
 メシを食ったら明日も朝早くから海に入るつもりなので9時に就寝したのだが、テントの内張りの蚊帳のジッパーの閉めが甘かったため半開きになっており、巨大なヤブ蚊を大量に招き入れてブスブスに刺された挙句何度も目を覚ますハメに陥るという大失態を演じてしまった。 慌ててメガネとヘッ電を装着してしばしの対空戦闘に突入。 血をたっぷり吸って動きの鈍った蚊は難なく撃墜できたのであるが、叩き潰した際に吸われた血が飛び散り、テント内のあちこちに血痕が点々と残りまるでホラー映画の一幕のように・・・なんてこった。