奥多摩三山 ミッツメ! 御前山(1405m)
評判の鍋焼きうどんを食いに丹沢の鍋割山に行くか、奥多摩三山の制覇を目指して御前山へ向かうか迷っていた。
御前山は遠くから見た山容がカッチョイイ(ピラミッドみたい)のでずっと気になっていたが、木が濃いので意外と眺望がきかず、カタクリの開花シーズン以外はそれほどそそるものがないような気がして後回しになっていた。 一方の鍋割は富士山の眺望が素晴らしい山だが、せっかくなら冠雪した真っ白い富士を見たいところ。そんなわけで今回は御前山を先に攻めることに決めた。 今は紅葉シーズンなのでカタクリ開花に次いで楽しめるはずだ。
ただ、ひとつ問題なことにこの御前山、特に自分が登る予定の檜原村側は日当たりの良い南斜面でエサも豊富なことから熊の目撃談も多い。 ブログで情報を収集したところ、「トレランのために入って15分で熊に遭遇」とか洒落にならない話がテンコもりであった。 おまけにバスの本数が少なく、御前山の登山道入口である宮ヶ谷戸を通るバスは朝八時に出るのを逃すと次ぎは二時間近く待たねばならないのだ。 日が落ちるのが早いこの時期、それは即アウトを意味する。
んなわけで眠い目を擦りながら武蔵五日市駅に降り立ち、バスに乗ったのだが、小岩行きバスは登山客で満員! これが全部御前山へ行く人!?と一瞬焦ったが、殆どが浅間尾根へ向かうのか払沢の滝入口で降りてしまい、残った人も天狗岩や大岳山登山口のあるバス停で降り、宮ヶ谷戸では自分ひとりになっていた。

バス停前に公衆便所があったので小便をすまし、民家の脇を通って御前山登山口へ向かう。
屈伸、伸脚の柔軟をしていざ山へ入る。 最初のうちはコンクリを軽く流したような舗装がしてあるが、じきに小石をまぶしたようなダートとなり、本格的な登山道となった。
初っ端から結構な急勾配であっというまに高度を稼いでいくのだが、15分ほどしたところでこちらの肝を冷やすブツが登山道のど真ん中に鎮座ましましていた。 真っ黒いペースト状の塊の中に、消化し切れていない何かの実のような粒々がびっしり・・・。
どうみても熊のウンコ
これまで「熊に注意」の看板は何度か見ていても、ここまであからさまに熊の生活痕を見せ付けられたのは初めてだった。注意して見ていれば爪で幹を引っ掻いた痕や熊棚みたいなのもあったのかもしれないが、目にした覚えは無い。 しかしこれはまごう事なき証拠。しかもまだ水分が結構残ってるようなヒリたてホヤホヤのブツである。 入って僅か15分のところであるがこれで完全にブルってしまった。
「やめようかな・・・・」 と思ったが、頑張って5時起きして1200円もかけてここまで来た挙句15分で帰るのは幾らなんでも勿体無い。 ここは恐怖心より貧乏性が勝利して先へ進んだが、足は早くも重く、腰も引けている。 意味も無く舌を打ったり、口笛を吹いたり、音を立てて痰を吐いたり、トレッキングポールをカチカチ言わせながら先へ進む。 向うがこっちに気がついて勝手に逃げてくれればよいのだけど。 上から葉っぱが落ちてカサカサと音を立てるたびに肝を潰して飛び上がったりしていたのだが、そのうちビビッているのに疲れてしまいだんだん無反応になってきた。 こんなことならちゃんと熊鈴持っていればよかった。
登り始めはかなりの勾配だったが途中からは歩きやすい道が続く。 途中こんな倒木に塞がれたりもするけれど

キノコやら何かの赤い実(テンナンショウの類らしい)やら

竜胆やら

に心を和まされながら登っていくと急にゴツゴツした岩塊が出てくる。登り始めて1時間15分ほど。 ここが「仏岩の頭」だ。
ここでエナジーゼリーを一口含み小休止。

ここからは針葉樹と広葉樹が交互に現れる緩やかな尾根道「湯久保尾根」だ。 歩きやすいし気分はいいのだが遠くの眺望が効かないのだけが残念なところ。


じわじわ上り、たまに下りを繰り返し歩き続けること1時間、11時になったのでミニようかんを食って小休止した直後にお手製の看板と壊れた祠のようなものがあり、ここからかなりきつい急登が始まった。 ヤマケイガイドによれば「仏岩の頭」から1時間20分ほどで避難小屋と山頂の分岐に出ることになっているのだが、自分がとろいのかこのタイムテーブルがおかしいのかかなり遅れている。 途中、登山道が荒れて迂回せねばならないこともあって余計に時間を食い、最終的に山頂に到着したのは12時13分。 仏岩の頭から2時間以上かかってしまった。

気温はそんなに高くないはずなのだが、暑くなったので働く男のDRYシャツ一枚
山頂はなかなかの賑わい。 やはり交通の便の問題もあって、檜原村側から登る人より、奥多摩湖や奥多摩駅(境橋)側から、もしくは大岳山や鋸山から縦走してくる人のほうが多いようだ。
他の登山者に写真を撮ってもらってから早速ラーメンを作りおにぎりとともにがっつく。 具がないマルタイの棒ラーメン(塩)なのでもう一つ味気ない(中華丼の具を混ぜるとぐっとうまくなる)が、それでも山のてっぺんで食べるアツアツのラーメンは格別だ。

山頂より石尾根方面を望む
食べていると向うのベンチに巨大な白いもふもふの犬がいる。グレートピレニーズ。 NHKのアニメ、「名犬ジョリィ」のモデルになった犬だ。 流石に出自が出自(高山地帯での牧羊犬とか山岳救助犬として活躍)だけあって1400mの山もものともしない。 飼い主さんによると人懐っこいのだが、写真を撮ろうとすると抱きついてまとわりつき、絶対にカメラ目線で撮らせてくれないお茶目さんらしい。

隙をついて物にした一枚。もふもふ。
午後1時に山頂を撤収し、境橋にむけて下る。 奥多摩側のほうが斜面は急だが、樹は広葉樹がメインで雰囲気はなんとなく明るく、色づいた葉っぱが華やかだ。 ただ、所々ガレていたり、岩が湿って滑りやすかったりで油断がならない。 急な下りのため足にも負担が掛かる。

下山路より大岳山を望む

巨大な桂の木


トチノキ広場
下っているうちに沢音が聞こえ始める。
奥多摩湖へ下りるルートと境橋へ下りるルートを選べたのだが、栃寄大滝という滝があるのがポイントで境橋ルートを選んでいた。 その滝がもうすぐ見えてくるはずなのだが・・・・


なんという事か、巨大な落石によって栃寄大滝が隠されてしまったのであった。
そういえば南紀の那智の滝も崩壊でまったく様相がかわってしまったというし、今年の台風の仕業かわからないけど滝もいつも同じ姿を見せてくれるわけではないのだった。
なんとなくブルってしまい、登山道を下るうちに舗装路に出た。 ここで山はおしまい。 なんとなく汗ばんだのでまた混紡シャツを脱いでDRYシャツ一枚になったのだが、ここでまた悲劇が発生した。 枝で引っ掛けたのかどうか判らないが、気がついたらハイドレーションのホースの先っちょのマウスピースがなくなっていたのである!山の中なので今から戻って見つかるわけも無く、諦めるしかなかった。
バス停に辿り着くと、バスがやってくるまで20分ほど。 3時台は一番下山者が多い時間帯だろうに一本しかないのだった(臨時便が一度に3台やってくる)。 もうちょっと本数多ければ良いのになあ・・・しかしそろそろ降りそうな雲行きになっている。 バス待ちの登山者に聞くと、当初の予報から早まり6時ごろから降るようだ。
だいじな道具を無くしたとはいえ、まあ登山中にずぶ濡れにならないだけマシだったのかな・・・。
