ヒ ラ メ!

 釣りに出かけた。
 去年の6月28日以来だから実に1年ぶりである。 実は先月の28日も休みだったので釣りに行こうと思っていたのだが、なんか天気は怪しいというか冴えないし、潮はよくない(長潮)しで気が乗らないでゴロゴロしてるうちに自転車屋から注文したブツが届いたという連絡があったのでそっちにいってしまった。
 去年の6月28日の釣行といえば驚きのアジ大爆釣に恵まれた記念すべき日であり、縁起もよかったのだが・・・。

 で、一年ぶりの釣行では当初の予定では万能竿とコンパクトロッドでお気楽にやる予定だったのだが、ふと思い立ってまだ一度も使っていない5.3mの遠投磯竿を持っていくことにした。 一昨年の10月に弓角サフトロ&爆弾専用として購入したのだが、祖母の入院とかいろいろあって8月以降釣りを控えているうちにシーズンを過ぎてしまい埃を被っていたものだ。

 相棒となるリールは本来ならダイワのクロスキャストなのだが、今回は爆弾サビキでもそう大した大物は来ないだろと考えていたので、万能竿用のリールとして買い換えたシマノのエアノスXTを組み合わせ、万能竿用には普段コンパクトロッドやサビキ用の磯竿に組み合わせているスプリンターマックスを持っていくことにした。 スプリンターマックスのほうには投げ釣り専用リールに巻いて50mほど余ったPEラインを巻いているので、これが活躍してくれるんではないかなと淡い期待。

 さて、一年振りの釣りは冴えない幕開けであった。 三春町岸壁に向かうには浦賀行き路線の「京急大津」で降りるのが近いのだが、半分寝ぼけていたせいか三崎口行き路線の「新大津」で降りてしまい、駅前風景を完全に忘れていた上に地図を持っていなかったおいらはいい年こいて迷子になってしまったのだ。

 うろうろと住宅街をさまよった挙句、電車を降りて40分ほどしてようやく見覚えのある京急大津に辿り着き、竿を伸ばしたのは1時半を廻ってからだった。

 竿を伸ばしてからも行動はちぐはぐで、爆弾サビキを投げてからウキを取り付けるのを忘れていることを思い出したり、ちょい投げで使うつもりだった10号のジェット天秤を忘れていたりと(前の日にチェックしたはずなんだけどなぁ)、一年ぶりでいろんな勘が鈍りまくってるようだった。

 巻いてあるPEラインは1.5号でナイロン換算だと4号前後。テーパーラインなしで投げるにはちょっと不安だが、遊動パイプ天秤にうまく入ってくれないので15号の遊動フロート天秤に通すことにした。 2年ぐらい前、ワゴンセールで購入した4号糸に力糸無しで使用したときには何度も破断してロスした苦い思い出がある。まああれは元来安物の上に売れ残りで劣化していたからであろうが、やはりちょっと不安。

 ウキをつけた爆弾を投げなおし、万能竿のちょい投げも2色ほどのところに落とすと魚信があるまではやることも無いので周りの人に声掛け捲ってみたのだが、かなり巧いシロギス師を除けば皆冴えない様子。 春以来頻繁に赤潮に見舞われてるとか夜中に来るとピカピカ光ってた(夜光虫)とか碌な話が聞けなかった。 こないだ取りやめた28日なんかうみかぜ公園のほうで悲惨な状況だったとか。ああ、行かんでよかったんだ。

 しばらくして竿に戻るとプルプルとした魚信。 上げると10cmちょっとのメゴチ。 こいつはどんなに渋いときでも必ず一尾くらいは掛かってくる律儀なやつだが、今回もしっかり掛かってくれて坊主は脱出。 ヌルヌルを取ってしまえば捌くのもちょろいのでジップロックに入れてキープ。

 その後もポツポツとブルブルした魚信がありメゴチがチョコチョコやってきたが、今日は渋いだけあって飲み込んだやつはゼロ。 皆揃って針を外し易い唇部分に引っかかっていた。 シロギスもとりあえず来てくれて、数は少ないけどまあ本命は来たし、来て良かったと思えるようになった。 天気もスカッと雲が消えて爽やかになってきたし。


 で、落ち着いたところで大事なことを思い出した。 オイラには「新調竿の呪い」ってのがあったのである。竿やリールを買っておろしたての、最初の釣行では必ず碌でもない釣果に終わるってやつで、去年のアジ爆釣で大活躍したコンパクトロッドも、投げ竿を差し置いてアイナメやカレイを上げているこの万能竿も、なかなか結果を出さない投げ竿も、どいつもこいつも購入後の釣行一回目は碌でもない結果に終わっているのだ。一緒に持っていった古めの竿のほうはちゃんと結果を出しているのでこれはもう「新調竿の呪い」としか言いようが無いではないか。

 で、本日デビューの遠投磯竿はというとうんともすんとも言わない。棚がずれているという可能性もあるが、周りで爆弾に挑戦してる人間もいないので回遊魚の気配自体薄そうなのだ。アジやイワシが襲来してくるのは大体夕方だが、サバなんかは真昼間から突っ込んできたりするので群れが廻っていれば釣る人の活気でなんとなく判るのである。
 
 やっぱりだめだなぁ、投げサビキで結果を出すのは次回以降かなぁと万能竿のほうにばかりかまっているとなんとも形容しがたい感触に襲われた。
 
 アイナメの必死の首振りダンスでもない、カレイの重たい引きでもない。

「テメーそんなやわな竿とリールで俺様を抜き上げられるとでも思ってんのか?ああん?」


と言わんばかりの挑発的かつ攻撃的、それでいて余裕すら感じるずっしりと重い引き。ビニール袋だってこんなに重くない。 必死でリールを巻いてやっとこさ寄せて抜き上げるとビチビチと菱形の巨大な魚影が姿を現した。 ここの堤防は高いから向こう側が見づらいのである。


 「うおおおーっ!」


思わず絶叫。30cmはあるカレイだ。渋い反応の中で目立っていたか、早速野次馬が寄ってきて
「おお・・・ヒラメか!」
いや、カレイでしょ、と針をはずそうとすると

クワッ!

牙?

何で君牙があるの? きみはカレイじゃないの? 良く見ると目玉は左側。



どうみてもヒラメです、本当にありがとうございました・・・・。


シロギスなりハゼなりを生餌に泳がせて釣る、フィッシュイーターとしてマゴチと双璧の高級食材というイメージがあったのだが、このくらいのサイズだと虫エサにも突っ込んでくるのであった。

 エラにナイフを入れ、ささっと血を抜いてからクーラーに仕舞ったのだが、予想外にこれくらいのが来ると「もう今日は後釣れなくてもお土産はキープできたからいーや」となる。 このおかげで結果を出さない遠投磯竿の爆弾サビキは見切りをつける決心がついた。ウキと自作のジェットプラカゴを外し、スキンサビキに軽くコマセをなすりつけるスキンとトリックのハーフ&ハーフ釣法に切り替えた。それでも新調竿の呪いはがっちりと付きまとっており、まるっと反応が無いまま5時を廻ってしまった。

一方大金星のヒラメを上げた万能竿はその後もポツポツと結果を出し、最後のエサとなった段階では千切れかけのイソメでメゴチ1&シロギス2の3連発をかますという大健闘を見せた。 と、いうか、今日はサイズのちっさいやつばっかだし、あんまり飲み込まないのでイソメを小さめに切った方が良かったのかもしれない。渋いときはたっぷり大きくつけて食い気を誘うのがセオリーではあるけれど。

 で、エサ切れのあとは遠投磯竿から外したリールを万能竿に装着し、イワシ&アジかかって来いや!のトリックサビキの一本勝負。 群れが来ると2本出してる余裕なぞ無いのである。


 で、群れがよるまで隣の人(15mほど向こう)とだべっていたのだが、ここで悲劇がやってきた。
竿の場所に戻ると、バケツとエサ付け器はあるのに竿がない。

???


まさか! 持っていかれたのか?

ちょこっと大きくなったメジナだと結構な引きがあるのでいい加減な掛け方をしていると竿ごと持っていかれる危険があるのだが、このときも油断していたのでケーソンの継ぎ目みたいな凹みに竿を引っ掛けたままにしていたのだ。
 
 あわてて堤防に登って下を覗くとなんてこったい! ぎりぎり手が届く防波堤の出っ張りに糸一本で引っかかって竿が逆さまになってブラブラぶら下がっているではないか。 あとちょっと糸がずれたら海へまっさかさま。あわてて糸を引っつかんで何とか回収。 危なかった。

リールを巻き取ると15cmぐらいの結構大きめなメジナ。 以前大磯でかかったのより二周りぐらい大きい。 なるほどこいつの引きでは持っていかれても不思議は無いが、こんなに元気が良くても堤防際のメジナなんて食っても旨くないのでリリース。

 その後もちまちまと海タナゴとメジナが良い引きをしてくれたのだが、ヒラメをキープしてるとこんなのは持ち帰る気にはなれない。

 いい加減時合いなのに今日はだめかと諦めかけているとようやくアジがやってきたが、去年釣ったのよりちっさい豆アジサイズ。しかも群れて押し寄せるのではなく5分おきの単発ばかり。一回だけダブルがあったが、これもフライにもし辛いような豆サイズであった。エサ付け器を堤防から落として(エサが無くなって軽くなっていたので動いてしまった)壊したのを期に納竿。 イカ釣りを始めるおじさんに豆サイズのアジを一尾譲って後片付けをした。 マナーの悪いのがそこら中にゴミを散らしているので余計にゴミを拾って撤収。

 一年振りの釣行は想定外の大物と簡単な本命がいまひとつ不調というよくわからない、しかしなかなか楽しいものでありました。



場所:横須賀市 三春町岸壁
 実釣時間 13:30〜19:00
 潮汐:大潮
 満潮 2:40 17:31
 干潮 10:13 22:33

爆弾
 竿: SZM シーロード磯Ⅱ遠投3-53     
 リール:シマノ エアノスXT4000       
 道糸: DUEL MX500 4号
 仕掛け:自作ジェットプラカゴ+ハヤブサ飛ばしサビキ7号ピンクスキン  
 エサ: アミコマセ  

ちょい投げ
 竿:TARGET 美浦15-300
 リール:Daiwa スプリンターマックスST-700
 道糸:ヤマトヨテグス サーフファイターPE遠投1.5号
 仕掛け:15号フロート天秤+SZM投大将8号
 エサ:アオイソメ 

トリック
 竿:TARGET 美浦15-300
 リール:シマノ エアノスXT4000
 仕掛け:まるふじトリック仕掛5号

 釣果: アジ13尾    
      メゴチ8尾
      シロギス4尾
      ヒラメ1尾

      メジナ3尾(全部リリース)
      ウミタナゴ4尾(同上)