島旅2009・夏〜新島〜 part3

 
  真夏のキャンプというのは普通めったくそ早く目が覚める。 というのも、

・暑くて寝苦しく眠りが浅い
・コーフンして眠りが浅い
・テントなので外の明るさの変化を感じやすい
・基本陽が落ちるとやること無いので前の日早く寝ちゃうから翌日当然早く目が覚める
 
などの理由がある。
が、今回はいつもと違いそうはならなかった。目が覚めると朝8時。なんと13時間ぶっ続けで爆睡していたのである。ここ数日あまり気温が上がらず、寝苦しくなかったことも目が覚めないことに繋がっている様だ。
 
 ちなみに今回の旅では3日間のうち1日は式根島に遠征する予定であったが、、式根行きの連絡船の第一便は8時20分発なのでいまから飯抜きで飛び出しても間に合うか微妙なところ。 ここはゆっくり朝飯済ませて、昨日回ってないところを見たほうがよかろうってことで、のんびり軽い朝食を済ませてそれから出かけることにした。
  
 クラッカーとチーズとギョニソーを食い終わって周りを見ると、起き出す人のほかにキャンプ場内を掃除している人がいる。 都のシルバー人材活用センターの方達のようで、この人達のおかげでこのキャンプ場は清潔に保たれているのであった。 管理人のおばちゃんも言っていたが、年々マナーは悪くなってくるので大変そう。 置き引きとかそういうのではなく、「置きっ放し」がかなりの問題で、遊びに使った道具のほか、キャンプに必須のグランドシートとかスリーピングマットまでその辺に放り出して帰ってしまうのもいるという。 そういや自分がテント貼ったところにいた外人さんご一行もバトミントンのラケットとか折りたたみチェアとかマットとか蚊取り線香とか花火とか、一応一まとめに片付けてはいるのだけど盛大に置いていってしまった。 二日置きっ放しにしてると捨てられても文句は言えないシステムらしいので、蚊取り線香だけありがたくいただいてしまうことにした。
 
 ところでメシ食い終わって出かけようと思ったが、なんか体がだるい。寝すぎうんぬんではなく、頭がボーっとして、体全体が重たくて、すっきりしない。 昨日ちょっととは言え冷水に浸かって風邪引いちゃったんだろうか。
 それでも13時間ぶっ続け睡眠に加えて今からまた寝るというのはどう考えても怠惰すぎる。 今日は体に負担が掛からない限りでその辺を見て回ったりお土産購入に充てる事にして、無理しないでいこう、そうしよう。
 
 まずは朝の挨拶とばかりにメインゲートへ。 海岸に出ると海から(つまり東から)強い風が吹いており、サーファーにはがっくりなコンディション。昨日のように綺麗に巻いた波ではなく、あっちこっちにとっ散らかって砕けている。 大学時代愛読してた漫画「サーフサイド・ハイスクール」で、その主人公達が海を見て「今日はダメだね」「波ぐちゃぐちゃ」と会話するシーンが思い出された。 その時はどういう意味かまるで判らなかったけど、昨日みたいな綺麗な波と今日の波を比べれば素人目にも一発で判る。
 ダイビングする時は海に向かって弱い風のほうがいいのだけど、サーフィンでもそれは同じだったようだ。
 
 自分はサーフィンやるわけじゃないけど、残念そうにしているサーファーや、綺麗ではない波を見ているとこちらもあまり面白くない。 早々に退散し、まずは昨日は休館日だった新島村博物館へ行くとするか。 と、その前に寄れる史跡を探訪ってことで、かつて流刑者が埋葬されたという流人墓地へ向かう。  ところが長栄寺と新島の共同墓地はあったのだが、肝心の流人墓地が見つからない。  まあでも必死で探さにゃならんものでもないので、さっさと引き返してすぐそばにあるクサヤ専門店でお土産を物色。 「菊孫商店」でとびうおと青ムロアジのクサヤにたたきのすり身を購入し、話のついでに流人墓地について聞くことにした。すると、
 
 「流人墓地は共同墓地の一角にあるんですよ。 看板もありますがおばあちゃん達が掃除してたらそこで聞いてみるといいですよ」
 
とのこと。 史跡を訪ねるのに一般人の墓地を通っていくとは思わなんだ。 
 
 お土産はチルド便で内地に送ってしまうので荷物が増えるわけではないから、身軽なまま共同墓地へUターンし、ずかずかと入っていく。  ここの墓地は背後に宮塚山の森、園内には楠、地面はコーガ石を砕いたような白砂の照り返し・・・と、緑と光に溢れ非常に明るく清潔感があるのだが、びっくりするほど綺麗にしている分敬虔な追悼のキモチが込められているようで、物見遊山の自分が踏み込んでいくのはどうにも躊躇われる。 自分のじーちゃんの墓がある亀戸の墓なんかうすっ暗くてじめじめしているのだけど、こっちの共同墓地のほうが明るく乾燥しているのになぜか緊張というか「出そう」な感じがするのだ。 蝉がみんみん唸っていて、肌もジリジリ炙られているのになぜかひんやりしていると言うような・・・。 
 
 ところで、ここの墓地はちょっと立派なお墓には皆トステムのカーポートのような屋根かヨシズが張られているのが特徴だ。なんでも強い日差しの下、供えた花が長持ちするようにという工夫らしい。共同墓地ではない立派な一軒墓地になると丸ごと家みたいなもので囲ってしまっているのもあるとか無いとか。
 
 そうした至れり尽くせりの墓地のなかをサクサクと音を立て歩いていると、なるほどおばあちゃん達がせっせと掃除を始めた。 このおばあちゃんたちのおかげでキャンプ場同様この墓地はチリ一つ落ちていない(ほんとに!)清潔さが保たれているのだ。 そのおばあちゃんの1人に流人墓地の場所を尋ねると、ようやく発見できた。
 

 
 ・・・なるほど。 確かに異様な雰囲気。 ここだけ一段低くなっている上に、周囲を木で囲われてうすっ暗い。 墓石もやや粗末な感じ。 何ていうのかな、確かに誰でも入れるように、見れるようになってはいるんだけど、ホントに入ったらダメとでもいうのか・・・。 昔は厳密に植栽で区別され、共同墓地から直接通り抜けて入ることは出来ず、「不浄道」と呼ばれる別の道から入ることになっていたそうだ。 
 
 ウルトラ飲兵衛だった人らしき墓石は酒樽のかたち、ギャンブル狂いの流人の墓石はサイコロだったり、そこだけ遊び心が感じられたりはするんだけど(酒樽墓石のとこだけ缶ビールが供えられてる)、

 
基本そんなにわくわくするものではない。
  
 こうした離島に流される人のうちで、インテリの政治犯だったりすると島の人の生活向上のために尽くして親しまれ惜しまれたりするのだけど、泥棒や強盗、傷害などの粗暴犯はやはり疎まれあっちいけ状態だったのだなぁ、と年月を隔てた墓地を見るだけでも手に取るようにわかってしまうのであった。
 
 さて、なんとなく背中に重たいものを感じつつ、本日のメインイベント新島村博物館へ。
 
パッと見で判ると思うけど、資金の潤沢さかその他の理由か、木造建築の役場の建物を流用した八丈島の郷土資料館に比べると段違いの豪華な建物である。


コーガ石のピラミッドのよう
 
ここで島の成り立ちとか流紋岩とか安山岩とか高校大学でさんざやったことをなんとなく眺めながらぐるぐる回るのだが、ここに来て物凄くだるさと眠気が揺り戻してしまい、見たもの聞いたものがすっかり右から左へ抜けてしまった。
 

 二階にはサーフィンのメッカ、新島らしく昔のサーフボードの展示がイッパイ。ここに来て気付いたのだけど、この建物外壁はコーガ石なんだけど、上半分はテントなのね。 光が入って電気代も節約できるのだな。
 

 
 博物館を出たらそろそろメシどきなのだが、食欲が無いので昼食は抜いてそのまま温泉へ突入。
アクロポリス遺跡みたいな一歩間違ったら悪趣味全開の無料露天風呂だが、島特産のコーガ石へのこだわりのおかげか、不思議と品の悪さは無い。 そしてなにより青い海と空に映えるので結構いい感じ。
 


 
 海風に吹かれ、温泉に浸かってふぃー極楽極楽とオッサン化していたらこれまでの島旅でありえなかった異変に遂に遭遇してしまった。
 
何かって?  それは・・・・
 
水着ギャル軍団の襲来
 
なんだか雑誌に出しても文句が出なさそうな可愛い女の子達、しかもビキニでグラマラス。お近づきになりたいところだが七対一ではとても太刀打ちのしようが無いので湯船の中で縮こまっているしかなかった。下半身は元気100倍なのだけどね。
 
 八丈島では枯れた爺さん、式根では全身刺青のヤーサンといっしょいう悲惨な状況せあったが、さすがは夏の新島。遂にギャルと混浴(水着着用だけど)という夢のような僥倖にめぐり合えたのであった。 湯上がりのサイダーもまた格別でござんした。
 
 この後観光協会へ行き再び情報収集。今日あちこち回ったのだけど、バスの停車地のはずなのに停留所も時刻表らしきものが見当たらないので不思議に思っていたのだ。聞いてみたら、
「乗降場所は公民館や健康センターの前とか決まってるけど停留所は無い」
とのこと。 また、若郷に行くにも村営バスは一日3本しかなく、それもキャンプ場の近くからだと朝8時か10時40分のに乗らなければ帰ってこれなくなってしまうらしい。 明日は体調さえ戻れば式根島へ行くつもりだから、今回は諦めるしかなかった。 尤も若郷に限って言えば観光客を寄せようとこれっぽっちも思っていない寂れた漁村らしいから、無理して行ってもあまり歓迎されないのだろうけど・・・。
 
 温泉でスッキリしたら昨日行っていなかった「シークレット」へ向かう。 羽伏浦の南の端っこ、白ママ断崖のチョイ手前。地元のサーファーだけがこっそりと楽しむということから「シークレット」の名がついた。 昨日行った新島空港の横の道、突き当たりちょっと手前を右に曲がり、畑沿いの森のトンネルを進んだ先にそこはある。 車を数台置けるスペースから階段を下って現れる秘密の場所、そこがシークレットだ。
 


これはヤラセ写真です。いい感じで撮れるようヤシの実を動かしました。テヘ


 
 昨日降りていった空港下と大差は無いんだけど、断崖がより高く、秘密ポイントっぽさはさらにUP。
それにこの白っぽい断崖はなんとなくトルコのパムッカレを髣髴とさせるよね。いや、行ったことはないんだけどさ。
 
引き潮の時なら30分ぐらい歩くと波打ち際を伝って白ママ断崖のとこまでいけるらしいです。 次に行く時には試してもいいかな。
 
 シークレットを後にしたらキャンプ場へ戻り、レトルトカレーで早めの夕食。 水シャワーをさっと浴び、今日も7時過ぎにはさっさと眠ってしまいました。