八丈島旅行(その2)

 
 三宅島着の船内放送でたたき起こされた。 八丈島でも神津島でもそうなのだが、手前の島に停まるときの放送は本当に辛い。 特に三宅は明け方五時でまだ眠い時間なのでもうちょっと何とかしてもらえないかなぁ、と不機嫌になってしまう。おまけにちょっとうねっていたのか、知らず知らずのうちに船酔いしていたようで吐き気がしてきた。一旦汚物流しの前に立ったものの、アゲるものもないのでベルトを緩め噯気だけして寝台に戻る。 しばらくうとうとしたものの、すぐに御蔵着のアナウンスでたたき起こされてしまう。 肝心の御蔵島は潮流が強かったせいで接岸できず、八丈島に着いた後、引き返しの際に接岸できるかが勝負になりそうだ。
 
 寝台にいて寝っ転がっていると吐き気がしてくるのだが、デッキでうねっている海を眺めていると少し楽になるのが不思議だった。が、Bデッキにいると飛沫を被ってしまうというので船内に戻るが、すると今度は重油臭さが鼻について吐き気・・・というドツボループに嵌っていたのでした。
 
 ようやっと八丈に到着してフラフラ船を出ると、地元の観光協会が勇壮な八丈太鼓でお出迎えしてくれる。
 

 
 おかげでなんとなくシャキっとすることができた。手荷物受け渡し所で自転車を受け取ると、まず底土キャンプ場へ向かい、テントを設営。 流石に8月だけあって朝日の直撃を防げる東寄りの「一等地」はすべて占領されていた。仕方なく一番港よりの端っこ、洗濯物を干しやすそうなところに住居を定めた。お隣さんもサイクリストで、驚いたことに自分と同じくビアンキに乗っているのでありました。

 お隣さんは颯爽と走り出していったが、自分はまずは潜りだ潜り!てなわけでラッシュガード代わりのシャツと海パンに着替え、3点持ってキャンプ場前の海に飛び込む。 

 ・・・黒潮直撃中なだけあってぬるい!そして透明度も高い! が、残念なことにやや曇りがちで太陽が隠れてることもあって今ひとつ気分が乗らない。 キャンプ場前は海底が砂地ではなく比較的ごつごつした玄武岩質のゴロタやスコリア粒なので暗めに見えるのと、何より思いの外魚もサンゴも少ない。 「いらっしゃ〜い!」とばかりに熱帯魚が乱舞しているを想像していた自分にとって、申し訳程度のカゴカキダイとキュウセンがもそもそ泳いでるだけ、というのはちょっと納得できないものであった。 こういう海の常として真っ黒いナマコが大量にのたくってるのも一段と気を沈ませる。ちょっと沖目の岩礁帯で黄色のブダイ(ヒブダイ?)と上がり間際に結構でかいカワハギに遭えたのが唯一の収穫であった。 おっかしいな、底土は結構魚が多いって話だったのだが・・・。
 

 とりあえずそろそろ昼飯時だし、朝飯食ってないからこの辺で切り上げてまずは飯食いにいくか・・・。
 
 昼飯は前回の旅でも検討したけど結局食いに行かなかった「合月」に決定。ここはあしたばうどんが名物なのだ。 つゆに山葵でなく青赤唐辛子をいれるのがここ八丈島風らしい。何も考えずに入れたら激辛で咽てしまったがなかなか美味い。 明日葉の天麩羅もサクサクでなかなかよろしい。 式根島の弁当食った時も感じたが、自分は意外と明日葉の天麩羅が好きらしい。
 

 
 飯の後は前回訪れなかった熱帯植物園へ。

 
 特に何かというわけじゃないが一応「八丈島のきょん!」を見ておかねばと思ったのだ。 暑さのせいかキョンは皆覇気がなく、モグモグと反芻しているだけだった。角突き合わせて喧嘩したのか判らないが、そろいも揃って右の腰辺りに怪我をしていて痛々しい。
 

 
 園内はいかにも亜熱帯的な根っこ垂れ下がり系の植物や椰子が豊富でなかなか風情がある。この時期だと夜8:00から光るキノコの観察会が行われているのだが、昼間でもビジターセンターの暗室に行けば見られるので、夜行くのマンドクセ、という人はちょっと時間が開いた時に行っておくといいだろう。


よくわかんないかもしれないけど発光キノコ。
 
 この後ビニールハウスで綺麗な花を堪能し、キャンプ場への帰りがけに前回もお土産を購入したリキュールショップで芋焼酎を大量にゲット。さっさと内地にゆうパックで送ってしまい、気分も軽やかに帰ろうと思ったのだが、自分の自転車を見てふと気になった。 またもキャリアがずり下がっているのである。 前回の八丈行きでも、神津島に行く直前でも同じトラブルがあり、そういうのが嫌なので出掛けにガッチガチに締めておいたはずだが、耐荷重をオーバーしていたのかどうも頼りなくなっている。 そこでリキュールショップ向かいのガソリンスタンドでメガネレンチを借りてキャリアを取り付けなおし、改めて増し締めしたのだが、普段使ってるのより2倍近く長いレンチで力加減を完全に間違ってしまい勢い余って遂にやってしまった。 
 
「パッチーン」
 
ボルトがポッキリ折れてしまったのである・・・・・。
・・・まずいなこりゃ。
島内では重い荷物載せることはない(キャンプ場は底土だけなので、載せるにしてもスノーケリングの3点のみ)のだが、旅を終えて竹芝から自宅に帰るときにこれではまずいだろう。 4点のネジ止めでもずり下がったのが、3点だとどういうことになるやら。 場合によっては竹芝桟橋のロッカーにパニアバッグを預けるか、最終日前日にゆうパックでパニアバックごと自宅に送ってしまう事も考えないといけないかもしれない。 
 
 これで完全に意気消沈した自分はこれ以上行動する気が起きず、八丈ストアへ向かい晩飯の食材を買いに行くのであった。 ありがたいことに野菜を比較的小口(トマト、ジャガイモ、たまねぎは一個ずつ、キャベツは半玉)で売っているので晩飯に野菜をちょこっと添えるのも可能だ。 ジャガタマキャベツが使えるのでポトフでも作ろうかと一瞬考えたが、コンソメを持ってこなかったのですぐに却下。 小さめの苦瓜とツナで簡単チャンプルーに決定。
 
 食事は暗くなる前に済ませてしまった。 底土港ではムロアジの群れが安定してやってきているようで釣りに行った人達は皆大量。 キャンプ場のヌシ的なじいさんに「竿借りれっからおまえも行って来い」としきりに勧められるが、沢山釣っても一人だから食いきれないし・・・。 行き当たりばったりでいろいろ楽しもうにも準備とか道具のことを考えると結構メンドイのが単独行なのである。 発泡スチロールの簡単クーラーボックスを買って、帰るときにその辺のキャンパーにあげちゃうってのも手なのだろうが。 
 
 テントにもぐりこむと疲れが溜まっているのかすぐにうとうとしてきたが、亜熱帯の腰の入った暑さと、炊事棟のあたりでビートルズを歌って盛り上がっている外人キャンパーのおかげでいつまでたっても熟睡できず辛い夜となった。