干物を作ってみたよ

 先日の大磯釣行で持ち帰ったトウゴロウイワシを干物にしてみた。

 トウゴロウイワシってのは臭いがキツイというかなんというか、味も生臭みが強すぎてあんまりイケないというのが定説である。実際クーラーに氷を足して明日捌こう、なんてことやってると翌日蓋を開けたときに腐ったわけでもないのに強烈な臭いを放って面食らったりする。

 この「なまぐさ臭」「強すぎる魚味」が生餌にしたりするときに効果を発揮したりするのかもしれないが、自分が食べるとなるとちょっと二の足を踏んでしまう。

 一方で三浦半島西岸地区では「ボライワシの干物」なんつって売られていたり、「素揚げにすると鱗もパリパリ食べられて美味しい」「天麩羅にすると鯊と同じ味がする」「新鮮ならば刺身もいける」と妙に評価されてたりするのも事実だ。 じっさいすずき釣具のてんちょは「キミ、トウゴロウを馬鹿にするのはまだ素人だぞ」なぞと力説していたし。

 南蛮漬けがどんな魚でもとりあえず食える万能調理法ではあるのだが、親父が釣って来るイシモチやメバルでいい加減飽きているし、刺身で食べるのはちょっと怖いので干物にしたわけだ。それに調味料ではどうにもならなくても太陽の力を借りて干物にすれば味にまろみが出るかもしれないではないか(庭のシブ柿が羊羹のように甘くおいしく変身したのを確認済み)。

 ゴリゴリに硬くしつこい鱗を丁寧に落とし(ここが触るだけでボロボロ剥げちゃう本物のイワシと違うところ)、以前カタクチやアジで失敗してるので今回はハラワタを抜く。トリックサビキで釣った魚はおなかにコマセアミが入ったまんまの事が多く、それの臭いが身に移って台無しになってしまう事があるからだ。

 ワタを抜いたトウゴロウのお腹の中を見てみるといかにも不味そうな真っ黒い腹膜があるので、これも使い古しの歯ブラシで全部擦り落とした。ぜんぶワタを抜いた事で丸干しの醍醐味である苦味が飛んでしまうかもしれないが、今回は不味さをできるだけ取り除くことが課題なのでこれでよかろう。

 ワタを抜いて綺麗に腹を洗ったトウゴロウを酒、塩ともにかなり濃い目にした漬け汁に漬けて一時間ほど置き(雑味が強い魚は半日位漬けておいた方がいいらしいのだが冷蔵庫のスペースが無かったので)、風乾ネットに並べて吊るした。できれば目刺しにしたいのだが、いつも庭に生ごみを埋めているのと家の前にごみ集積所があってハエの襲撃を防ぎきれないので仕方が無い。

 突然の夕立で少し濡らしてしまったが、風と太陽の恵みをしっかり受けたおかげで腐ることもなくカラカラの干物が出来上がった。 味はどんなもんだろうか。